【両顎手術の「たるみ」でお悩みの方へ】原因と対処法について

顎の左右差や噛み合わせの改善、面長の改善などを目的として行われる両顎手術(上下顎骨切り術/ルフォー・SSRO)は、機能面・審美面において変化が期待できる治療です。
一方で、手術後に「頬がたるんだ」「正面から見た輪郭が洋ナシのようになった」「口横がもたつくようになった」「中顔面が間延びして見える」といった、術前にはなかった変化を感じる方もいらっしゃいます。
当院ではオトガイ形成などの輪郭手術や脂肪吸引、フェイスリフトといった輪郭に関連する手術などを数多く行っていることもあり、こうした両顎手術後のたるみや輪郭のゆるみについてご相談をいただく機会があります。そこで今回は、なぜ両顎手術後に頬や口元のたるみが目立つことがあるのか、その原因と対処法、さらにこれから両顎手術を受ける方が知っておきたい対策についてを美容外科的な視点から解説します。
この記事は、両顎手術後の以下症状でお悩みの方にお勧めです
- 術前には気にならなかった頬のたるみが生じた
- 口横のもたつきや膨らみが目立つようになった
- 輪郭がかぼちゃ型、洋ナシ型のように下膨れて見える
- フェイスラインが波打ち、滑らかに見えない
- ほうれい線やマリオネットラインが目立つようになった
- 顎を短くしたはずなのに、中顔面が間延びして見える
- 鼻の下がのっぺりとして、人中が長く見える
- 骨格は小さくなったのに、思ったほど小顔に見えない
- 手術前よりも老けた印象になった気がする
※現在当院では、小顔整形のお問合せがここ数年で急増したこともあり両顎手術そのものはお受けしておりません。両顎手術後の修正治療のみを承っております。
両顎手術とは
両顎手術とは、受け口や口ゴボといった噛み合わせにおける症状や、長い顎・ガミースマイル・顎の後退といったバランス面の症状を改善する際に行う治療です。
代表的な術式としては、上顎に対して行う「Le Fort I型骨切り術(ルフォー)」と下顎に対して行う「下顎枝矢状分割術(SSRO)」があります。症状によっては下顎枝垂直骨切り術(IVRO)やオトガイ形成術などが併用されることもあります。上顎と下顎を同時に動かせるため、片方の顎だけを移動させる手術では改善が難しい、上下・前後・左右にまたがる複合的な骨格のずれや噛み合わせを調整できることが両顎手術の特徴です。
保険適応となるケースについて
両顎手術には保険診療と自費診療がありますが、適用条件や手術の目的が異なるため補足として以下にまとめます。
保険診療について
顎の大きさや位置関係に著しいずれがあり、噛み合わせや咀嚼などの機能に問題が生じている「顎変形症」と診断され、外科的矯正治療が必要と判断された場合には、一定の条件のもとで健康保険が適用されます。保険診療として外科的矯正治療を受けるためには、厚生労働省が定める施設基準を満たし、地方厚生局へ届け出た顎口腔機能診断施設などで診断・治療を受ける必要があります。
なお保険診療の場合は、噛み合わせや咀嚼などの機能改善が治療の主な目的となります。顔貌の変化についても考慮したうえで手術計画が立てられますが、美容目的の細かな輪郭形成や、皮膚・脂肪などに対する追加治療は保険診療の対象にならないケースがあります。
自費診療について
顎変形症として保険適用となる条件を満たさない場合や、「面長を改善したい」「口元を下げたい」「顎を短くしたい」「よりシャープな輪郭にしたい」など、主に美容面の改善を目的として行う場合は自由診療となります。
両顎手術後に起きうる顔貌の変化
両顎手術を受けて骨格や噛み合わせを改善した際に、皮膚や脂肪とのバランスが変わったことで術前に予想していなかった顔貌の変化が現れることがあります。その代表例が「たるみ」となるのですが、ここではそれ以外にも生じることがある変化についてまとめます。
上顎の移動後に目立つことがある変化
・頬のたるみ
・ほうれい線の目立ち
・鼻の下や人中が平坦に見える
・中顔面が間延びして見える
・頬の輪郭が滑らかに見えない
・鼻翼や上唇の形、鼻唇角の変化
上顎の移動では、骨だけでなく鼻翼、鼻柱、上唇、頬など上顎周辺にも変化が生じることがあります。このような変化は上顎を前後・上下のどの方向へ動かし方によって異なる他、同じ移動量でも仕上がりには個人差があります。
下顎・オトガイの移動後に目立つことがある変化
・口横のぽにょ(もたつき)
・口元のたるみや膨らみ
・マリオネットライン
・フェイスラインのゆるみ
・洋ナシ型のような下膨れ感
・顎周辺のハリ感の低下
・輪郭の凹凸や左右差
下顎を後方へ移動したり、オトガイを短縮・後退させた際に、骨格の前方への張り出しが小さくなることで、口元やフェイスラインの軟部組織が相対的に余って見えることがあります。その結果、顎は小さくなったのに「口元のもたつきが増えた」「輪郭が波打っているような状態になった」「手術前よりも老けてみえる」と感じることがあります。
なぜ輪郭手術後にたるみが生じるのか
両顎手術後にたるみが出来てしまう原因を分かりやすく説明すると、「土台となる骨格の位置や大きさが変わったものの、その外側をカバーのように覆っている皮膚や脂肪は同じ割合で変化しないため」です。
顔は、「骨」という土台の上に
・骨膜
・筋肉
・SMASなどの筋膜組織
・顔面保持靱帯
・深部脂肪、皮下脂肪
・皮膚
といった複数の組織が重なることで構成されていますが、骨を移動させたとしても、皮膚や脂肪が同じように動くわけではありません。そのため骨格との位置関係や組織にかかっていた張力が変化し、それまで目立たなかった皮膚や脂肪の余りが頬や口元のもたつきとして現れます。このような現象は特に以下のような際に目立ちやすい傾向があります。
・骨の後方移動や短縮量が大きい
・もともと頬や口元の脂肪が多い
・皮膚の弾力が低下している
・術前から軽度のたるみがある
・下顎やオトガイの前方への張り出しが大きく減少した
これらは必ずしも手術の失敗を意味するものではなく「骨の移動に伴って生じる軟部組織の変化」の一つにすぎません。とはいえ手術をする医師の立場からすれば、このようなたるみが出ないように事前に最大限の配慮をした上で手術計画を立てる必要があります。このような骨と軟部組織(皮膚・脂肪・SMASなど)のバランスを意識したアプローチは両顎手術に限らず「輪郭整形全般」において言えることで、あくまで私の場合とはなりますが、以下のような部分を意識した上でシミュレーションを立てることが多いです。
・骨を移動した方向と移動量
・もともとの頬や口元の脂肪量
・皮膚の厚みと弾力
・SMASや顔面保持靱帯の状態
・年齢
・体重の増減
・術前から存在していたたるみ
・オトガイ形成の有無
・術後に予想される腫れの経過
・術後に予想される瘢痕(皮下組織)の経過
術後すぐの見た目だけでは判断できません
注意点として、両顎手術やオトガイ形成など骨格にアプローチをする輪郭手術を行った後は、個人差はあるものの多くの場合で強い腫れやむくみ、皮下組織の硬さ、知覚の変化などが生じます。骨や軟部組織が安定して腫れや皮下組織の瘢痕が落ち着くまでには一定の期間が必要になるため、手術後数か月程度の症状だけで結果を判断するのは少し早いかもしれません。術後の変化は、多くの場合は半年から1年ほどかけて徐々に落ち着いていきます。
十分な期間が経過しても頬や口元のもたつきが残る場合や、経過とともに下垂が目立ってきた場合には、単なる腫れではなく脂肪や皮下組織の余剰、軟部組織の下垂が関係している可能性もあります。修正治療を検討する際には、手術を受けた時期、骨の移動方向、プレートやスクリューの位置、骨癒合、腫れ、知覚の状態なども確認した上で適応や実施可否などを判断します。
両顎手術後の症状に合わせた治療法
両顎手術後のたるみなどでお悩みの際には、原因となっている組織(脂肪・SMAS・皮膚など)に応じて以下のような治療を行うことで改善が期待できます。
脂肪の余りや下垂が主な原因の場合
・顔の脂肪吸引(メーラー・ジョールファットなど)
・バッカルファット除去
手術後に頬や口元の脂肪が相対的に目立つようになった場合には、脂肪吸引や脂肪除去が選択肢となります。両顎手術後は骨格によるボリュームが小さくなっているため、脂肪を取りすぎると頬のこけ、ほうれい線のくぼみ、老けた印象などがかえって強くなる可能性があるためその点を留意して施術を行います。またメーラーファット、ジョールファット、バッカルファットは位置、深さ、役割が異なるため、必要な部分だけを適切に処置するように調整します。
軟部組織全体の下垂が主な原因の場合
頬の脂肪だけではなく、SMASや頬の深部組織を含めて組織が全体的に下垂している場合には、脂肪を取り除くだけでは十分な改善が得られないことがあります。このような場合には、フェイスリフトやミッドフェイスリフトによって、下垂した筋膜や脂肪などを適切な方向へ移動・固定します。中顔面の下垂が強い場合はミッドフェイスリフト、頬から口元、フェイスラインまで広い範囲にたるみがある場合はフェイスリフトなど、症状の範囲によって術式を選択します。比較的軽度のたるみで切開手術を避けたい場合には、糸リフトも選択肢となります。糸リフトはダウンタイムや費用を抑えやすい反面、切開リフトと比べると引き上げられる範囲や持続性には限界があります。持続期間は使用する糸、挿入方法、たるみの程度などによって異なり、効果は時間とともに徐々に弱くなります。
切開手術を避けたい場合
軽度のたるみであれば、HIFUや高周波で皮膚や皮下組織のタイトニングを図る方法があります。中~重度のたるみに対して効果を出すことは難しいですが、「手術は避けたい」「できるだけ手軽にケアしたい」という方にとっては有効な手段となります。
皮膚のゆるみが目立つ場合
・サーマクール
・ソフウェーブ
・ウルセラ(HIFU)
・糸リフト
皮膚の弾力低下や軽度のゆるみが主体であれば、サーマクールやソフウェーブなどの照射治療によって引き締めを図ります。
中顔面の間延び感が強くなった場合
・人中短縮術
・傷ができない人中短縮術(口腔内切開)
・Cカール形成
・鼻唇角形成術
・鼻や上唇を含めたバランス調整
上顎の移動後に鼻下が平坦になったり上唇の立体感が弱くなると、実際の長さに大きな変化がなくても人中が長く間延びして見えることがあり、このような場合は口元や鼻にメリハリをつける施術などが有効です。
両顎手術を受ける前に確認しておきたいこと
両顎手術後のたるみをできるだけ避けるためには、術前の段階から骨だけでなく、皮膚や脂肪などの軟部組織に起こる変化まで予測しておくことになります。もしこれから両顎手術を受けるという方がおられましたら、事前に次のような点を確認しておくとよいでしょう。
・希望している変化が機能改善なのか、美容面の改善なのか
・骨の移動によって鼻、上唇、頬、口元がどのように変化する可能性があるか
・術後に皮膚や脂肪の余りが生じる可能性があるか
・軟部組織の変化について、どのような術前シミュレーションを行うか
・術後のたるみや左右差が気になった場合に相談できるか
・術後に生じた症状に対して適切な修正手術の提案と実施が可能かどうか
・アフターフォローの有無(費用が発生するのか)
・アフターフォローを担当する医師について(執刀医が担当するのか別の医師なのか)
・アフタフォローを依頼する際の予約の取りやすさ(後回しにされないか)
・必要に応じて他の医療機関と連携できるか
両顎手術と同時に何かしらの施術を行えば必ずたるみを予防できるわけではありませんし、患者様の年齢や状態によっては併用治療をそもそも必要としないケースもありますが、術後のリスクをできるだけ抑えるためには事前に出来る対策をしっかりと行うことが重要ではないかと考えています。
輪郭の手術は思っている以上に奥が深い
両顎手術に限りませんが、輪郭にアプローチする手術は単純に骨を短くしたり細くするという機械的なものではありません。顔は、骨、筋肉、SMAS、顔面保持靱帯、脂肪、皮膚など、複数の組織が重なり合って構成されているため、骨切りによって周辺組織に派生する変化も事前に俯瞰的な視野でシミュレーションした上で手術計画を立てる必要があります。最近は「骨切り専門」「脂肪吸引専門」「糸リフト専門」のように、特定の分野に特化した形で治療を展開しているクリニックも増えているようですが、人間の身体は様々な組織が重なり合った集合体であることを鑑みると、輪郭・鼻・口元などの各部位において輪郭手術(骨格)・脂肪吸引・リフト術・マシンや注入術など幅広い分野に精通した医師・医療機関にご相談いただくことも、リスク対策のひとつとして有効なのではないかと考えています。
当院はここ数年で小顔整形(オトガイ・エラ・頬骨などの輪郭手術・脂肪吸引・各種リフト術など)のご予約が急増したこともあり、現在は両顎手術そのものの治療は行っておりませんが、各種輪郭手術や両顎手術後に生じた症状のご相談は随時お受けしております。気になる点がありましたら、お気軽にご相談下さい。
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